島根大学医学部附属病院 膠原病内科 instagram リンクアイコン 島根大学医学部附属病院 膠原病内科 instagram リンクアイコン

診療案内

Treatment

主な病気と当科の特色

Main Diseases and Features

主な対象疾患

リウマチ・膠原病疾患全般

  • 関節リウマチ
  • リウマチ性多発筋痛症
  • 成人スティル病
  • RS3PE症候群
  • 脊椎関節炎(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、SAPHO症候群など)
  • 全身性エリテマトーデス
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • シェーグレン症候群
  • 全身性強皮症(全身性硬化症)
  • 多発性筋炎/皮膚筋炎
  • 混合性結合組織病
  • 血管炎症候群(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、クリオグロブリン血管炎、IgA血管炎など)
  • 結晶誘発性関節症(痛風、ピロリン酸カルシウム結晶沈着症)
  • サルコイドーシス
  • 再発性多発軟骨炎
  • ベーチェット病
  • 自己炎症性疾患(家族性地中海熱など)
  • IgG4関連疾患

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己抗体と免疫複合体が血管壁や組織に沈着することで、様々な臓器障害を引き起こす自己免疫疾患です。その症状は、発熱、関節炎、倦怠感といった非特異的なものから、腎炎や中枢神経症状に至るまで多岐にわたります。過去30年間でステロイドや免疫抑制剤の使用により、SLE患者の生命予後は改善されてきましたが、依然として治療薬の副作用によって命を落とすリスクが存在します。
当科では、SLEの病態解明を目指し、さまざまな研究を行ってきました。具体的には、SLE患者のT細胞におけるシグナル伝達物質を介したサイトカインやリンパ球活性化機構の解明に取り組んでいます。特にループス腎炎に関しては、腎臓局所のメサンギウム細胞や糸球体上皮細胞(ポドサイト)の機能的制御に焦点を当てて研究を進めてきました。また、神経精神ループスにおいては、髄液中の特異的自己抗体の同定と、それが炎症性サイトカインを誘導するメカニズムを明らかにする研究を行ってきました。

ループス腎炎の腎生検組織

ループス腎炎の蛍光染色

さらに当科は、全身性エリテマトーデス患者レジストリー(Lupus registry of Nationwide institutions、LUNA)にも積極的に参加しています。LUNAは、国内最大級のSLEコホートとして、SLE患者の背景、治療、疾患活動性などの診療データや患者報告アウトカムを収集し、多くの疫学研究を進行させています。2020年10月からは、ゲノムDNA、血清、血漿、尿検体の収集を開始し、豊富な臨床データと連結可能なバイオバンクとして機能しています。このようなデータとバイオバンクの活用により、SLEの理解と治療の発展に大きく寄与することを目指しています。
SLEの治療においては、生物学的製剤や分子標的治療薬などの新しい治療法が開発され、進歩が著しい疾患でもあります。当科は、これらの最新治療法の研究と実践を通じて、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供することを目指しています。SLE患者の生活の質を向上させるために、最新の医学知識と技術を駆使し、包括的な診療を提供しています。(文責:一瀬 邦弘)

病診連携/遠隔診療

膠原病内科の代表的疾患であり最も患者数が多い疾患に「関節リウマチ」があります。この疾患では全身の関節で炎症を起こし、関節腫脹、関節痛をきたすだけでなく骨破壊や関節変形をきたし、生活動作に支障をきたすようになります。また発症早期に最も関節破壊が進行することも知られており、早期診断、早期治療が重要になっています。診断にはリウマチ因子、抗CCP抗体を測定することも大切ですが何よりも関節を触診し、関節炎が存在することを確認することが重要です。また、触診は治療開始後の疾患活動性評価にも必要になります。

病診連携×遠隔診療によるリウマチ診療

しかし、島根県では関節所見を正しく評価できるリウマチ専門医が不足しており、そのため早期に診断に至らなかったり適切な治療を受けることができない患者さんが少なくありません。そこで当科では2010年から地域かかりつけ医の先生との病診連携に取り組んできました。専門医の診察は3〜6ヶ月毎に行い、普段はかかりつけ医で診察、投薬、検査を行います。こうしてかかりつけ医と専門医が連携してリウマチ診療を行うことで、専門医でないかかりつけ医もリウマチという疾患、治療を理解し、関節の触診方法を身につけることができます。専門医でなくとも地元でリウマチを理解した医師に診てもらえる体制を作ることで、治療に伴う合併症の発症も抑えられることも証明されました。島根県では他県に先んじて高齢化が進行しています。交通インフラが乏しい島根県において、3〜6ヶ月毎の遠方の専門病院への受診でさえ困難な患者さんが今後増えてくるでしょう。そのため現在行っている病診連携に遠隔診療を組み合わせる試みを現在開始しています。この取り組みによって、かかりつけ医を受診した患者さんと専門医をテレビ電話で結ぶことで、専門医とかかりつけ医は直接話し合いながら治療方針を決めることが可能となり、患者さんは専門病院へ行かずとも地元の病院でタイムリーに最適な治療を受けることができるようになります。当科では、島根県内どこに住んでいても都市部と変わらない高度なリウマチ診療を受けていただくことができる体制づくりを進めています。(文責:近藤 正宏)

プレコンセプションケア

コンセプション(Conception)は受胎、つまりおなかの中に新しい命をさずかることをいいます。プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことです。
近年、生物学的製剤や分子標的薬剤の登場により、関節リウマチ・膠原病の『WoCBA※』患者さんたちも治療と妊娠・出産が両立できる時代になってきました。その中でプレコンセプションケアはとても重要になってきます。
当科では、膠原病・プレコンセプション・妊娠外来を第1・3火曜日にひらいています。また、合併症妊娠例について産婦人科と定期的に合同カンファレンスを開催し情報共有を行っています。患者さんのライフステージに寄り添いながら、よりすばらしい人生になるようにサポートできるように努めていきたいと考えています。(文責:森山 繭子)
WoCBA(ウォクバ)「Women of Child-Bearing Age」の略。「妊娠・出産可能な年齢の女性」という意味

関節エコー検査

関節エコーは高解像度の超音波技術を用いて関節の内部構造を視覚化する検査方法です。以下のような利点があります。

早期診断

高解像度の画像により、関節内部の微細な変化や炎症を捉え、関節炎の早期診断が可能です。これにより、迅速な治療開始ができ、病状の進行を抑えることが期待できます。

治療効果の判定

治療前後の関節の状態を比較することで、治療がどの程度効果を発揮しているかを客観的に評価できます。これにより、治療計画の見直しや調整が適切に行えます。

低侵襲性

関節エコーは放射線を使用せず、身体的負担が少ないため、繰り返し検査を行うことが可能です。特に、継続的な経過観察が必要な慢性疾患の患者さんに適しています。

簡便性

診察室やベッドサイドで簡単に実施できるため、特別な準備や入院が不要です。日常診療の中で手軽に行えるため、多くの患者さんに対して広く利用されています。

痛みの評価

関節の腫れや滑膜の炎症、骨の変形など、痛みの原因を特定するのに役立ちます。これにより、適切な治療方法を選択するための重要な情報を提供します。

ガイド下治療

関節エコーは関節内への注射や穿刺などの治療をガイドし、正確な部位に薬剤を注入することで、治療効果を高め、リスクを減少させます。

当科の取り組み

当科では、2人の日本リウマチ学会登録ソノグラファーを中心に検査・指導を行っています。専門的な技術と知識を持つスタッフが対応することで、質の高い検査と診療を提供しています。関節エコーの利用により、早期診断や治療効果の判定が可能となり、患者さんの生活の質の向上に貢献しています。

手首の関節エコー検査

(文責:本田 学)

ページトップへ戻る