Professor’s Message
私が膠原病内科を選んだきっかけは、素晴らしい指導医との出会いや患者さんとの深い絆でした。優れた指導医から学ぶ中で、膠原病の魅力と奥深さを知り、患者さん一人ひとりとの関わりを通じて、この分野での診療に強い情熱を持つようになりました。膠原病リウマチ診療は、患者さんのライフイベントをともに歩んでいくため、長い関わりをもつことになります。患者さんとの信頼関係は、私にとって大きな励みであり、この分野での診療を続ける原動力となっています。
膠原病リウマチ診療の特色として、目に見えない免疫現象を想像しながら治療するところに面白さがあります。免疫を扱う膠原病は難しいと思われがちで、学生時代の私もそのように感じていました。しかし、患者さんを目の前にして臨床症状やデータをもとに学ぶと、次第に理解が深まっていきます。そして、患者さんの体に起こっている免疫現象を理解し、治療がうまくいったときに患者さんとその喜びを共有することができることも、この分野の大きな魅力です。
21世紀に入り、膠原病リウマチ診療は生物学的製剤や分子標的薬の著しい進歩により、大きく変革を遂げました。これらの治療薬の開発には免疫学は必要不可欠な学問であり、免疫学の膠原病学に対する貢献は非常に広く大きいものがあります。私自身はリウマチ専門医としての経験を積みながら基礎研究に従事し、改めて免疫学を勉強しなおしました。基礎医学を学ぶことによって、患者さんの現症をどう紐解いていくかという臨床力にも厚みが増したと感じています。
当科の雰囲気は、開かれた対話を大切にしています。新しい学問や発見は、自由な意見交換から生まれると信じています。皆さんが気軽に質問や意見を述べられる環境を整え、共に学び合う場を提供しています。
人生は「機(チャンス)」の連続です。よい機もあれば悪い機もありますが、その機を受動的に受け取るのではなく、積極的に活かしていくことが大切です。この姿勢が、皆さんの成長と成功につながると信じています。
当科は新しい診療科だからこそ、たくさんの「機」が存在します。皆さんにはその「機」を積極的に活かし、挑戦し続けてほしいと思います。
共に学び、共に成長し、未来の膠原病リウマチ診療を担う専門医としての道を歩んでいきましょう。
今後ともよろしくお願いいたします。
臨床医が研究をすることの
意味について
膠原病内科医が研究を行う意義
臨床医としてのキャリアを志す方々は、通常、臨床の現場で患者さんの診療を行い続けることを想像するかもしれません。しかし、臨床医であっても研究に従事することには大きな意義があります。膠原病内科医が研究に取り組むことによって得られる最大のメリットは、疾患に対する疑問点を明らかにするために必要な思考過程と検証方法を学ぶことです。これにより、臨床で直面する限界を打破し、新しい治療法の開発に貢献できるのです。
臨床の限界を超えるために
臨床の現場では、先人たちが築き上げた知識に基づき、明確な目標に向かって治療を進めます。しかし、ある段階で現実の限界に直面することがあります。例えば、進行した膠原病やリウマチ性疾患の治療では、現存する知識と技術を駆使しても完全な治癒が難しい場合があります。こうした限界に対して、「どこまで解明されていて、何がわかっていないのか?」、「新しい治療方法を考案するには何が必要で、何をすればよいのか?」という疑問を深く探求する必要があります。
研究を通じて視野を広げる
基礎研究や臨床研究に従事することは、臨床医としての視野を広げ、疾患への取り組み方や考え方を進化させます。研究では、大胆な仮説を立て、見通しがつかない中で粘り強く研究を進めることで、新たな発見や治療法の確立につながることがあります。こうした挑戦は、臨床現場に戻った際に大いに役立ち、臨床医としてのスキルアップにつながるのです。
私の経験:岡山大学での研究生活
私自身、医師5年目に基礎研究を行う機会に恵まれ、岡山大学に国内留学し、糖尿病性腎症をテーマに論文を執筆しました。この経験を通じて、上司や先輩、仲間との強い絆が生まれ、現在も多くの方々に支えていただいています。膠原病領域だけでなく、腎臓領域の研究に取り組んだことで、幅広い視点から疾患を捉え、自分の特徴を生かした研究ができるようになりました。
島根大学での取り組み
島根大学では、統合腎疾患制御研究・開発プログラム(IKRA、イクラ)が発足し、腎臓専門医を持った多分野の研究者が集まるコアを形成しています。膠原病内科もその仲間として、共に研究を進めています。このような環境での研究活動は、臨床と研究の相乗効果を高め、患者さんに対する最善のケアを提供するための強力な基盤となっています。
貴重な出会いと経験
研究の過程で多くの先輩研究者や同僚と出会い、共に課題に立ち向かうことで、自分自身の視野を広げることができます。これらの出会いと経験は、臨床医としての成長にとって貴重な財産となります。研究への挑戦をお勧めします。
長い医師人生の中で、臨床の壁に直面したり、目の前の疾患と闘う術がなく悔しい思いをしたりすることがあります。そんな時には、ぜひ一度、医学研究に没頭する期間を設けることをお勧めします。この経験が、臨床医としてのさらなる成長と飛躍をもたらしてくれることでしょう。
膠原病内科医が研究を行うことは、患者さんのために新しい治療法を開発し、医療の質を向上させるための重要なステップです。研究を通じて得られる知識と経験は、臨床医としてのスキルを高め、患者さんに対する最善のケアを提供するための強力な武器となるでしょう。
島根大学医学部附属病院膠原病内科
初代教授 一瀬 邦弘
Kunihiro Ichinose
当科の取り組み
Initiative島根大学膠原病内科では、学生・研修医の教育に力を入れており、実践的なスキルを身につけるための充実したプログラムを提供しています。
年間行事
毎年5月頃
若手医師のための
リウマチ・膠原病治療入門セミナー
当科スタッフが症例を提示し、学生・研修医の方々は3〜4人のグループでディスカッションを行います。追加の問診や検査、鑑別診断、治療方針について話し合っていただきます。各テーブルには当科スタッフがファシリテーターとしてサポートしますので、安心して議論を進めることができます。
毎年6月頃
SMPC
〜Shimane Meet the Professional Collagen disease!〜
膠原病内科のエキスパートの先生をお迎えし、膠原病の基礎から応用までを学ぶ講演会です。最新の知識と臨床経験を深め、一緒に膠原病の診療スキルを学んでいます。
毎年7月頃
膠原病内科・脳神経内科合同医局説明会
膠原病内科と脳神経内科は共に内科学第三の医局に属しており、気軽に相談し合える環境が整っています。医局説明会も合同で行っており、医局の雰囲気を感じていただけます。
週間行事
毎週月曜日
レクチャー
学生・研修医の方向けに関節痛に対する問診や身体所見、膠原病の検査の解釈等について実践的なレクチャーを毎週月曜日に開催しています。
毎週水曜日
Bedside Teaching
机上の勉強だけでなく、ベッドサイドでの教育も重視しています。毎週水曜日の回診時には学生・研修医の方々も一緒に入院中の全ての患者さんの回診を行います。その際に聴診や関節診察等の診察技術やコミュニケーション能力などを実践的に学んでいただきます。
週2〜3回
外来実習
膠原病内科は外来診療が重要な役割を担っています。病棟実習の他に、患者さんのご協力の元、学生・研修医の皆さんには初診患者様の問診や身体診察等を担当していただきます。問診・身体診察の後、上級医に今後の検査方針などをプレゼンテーションする機会があります。その後、上級医と一緒に患者さんを診察し、フィードバックを受けることができます。
毎週水曜日
関節エコー実習
学生や研修医の方向けの関節エコー実習を毎週水曜日に行っています。関節エコーはリウマチ・膠原病診療においてなくてはならないツールの一つですが、解剖への理解を深める絶好の機会でもあります。実習では、専門スタッフの指導のもと、実際にエコーを使って関節の構造を学びます。不定期ですが学生・研修医の方向けのセミナーも開催しており、さらに深い知識と技術を習得できます。
入局に関する
お問い合わせ先
0853-20-2196
(膠原病内科事務室)(医局長 森山 繭子)